厩舎の得意・不得意をデータで検証|休み明け・新馬戦・昇級初戦で強い厩舎は?
競馬新聞を見ていると、こんな会話をよく耳にします。
- 「この厩舎は休み明けから仕上げてくる」
- 「新馬戦なら、あの厩舎の馬は買い」
- 「関東馬の関西遠征は割引」
なんとなく、そう思っている。でも、本当かどうか確かめたことはありませんでした。
シリーズ「Claudeと競馬データ検証」の第2回は、厩舎ごとの得意・不得意です。昇級初戦、休み明け、新馬戦、連闘、遠征。5つの場面で、厩舎の成績に差があるのかをClaude(AI)と一緒に調べました。
※データはJRA-VAN(2019年1月〜2026年10月18日の平地戦)。対象は今年も出走のある現役の厩舎です。私が問いを立て、Claudeと一緒に集計・整理しています。
見方:「人気のわりに走ったか」で比べる
強い厩舎の馬は、そもそも人気になります。3着内率だけで比べると、「いい馬を預かっている厩舎」が上に来るだけです。
そこで今回は、同じクラス・同じ人気の馬の平均を1.0として、それより多く3着内に来ていれば1.0超、という数字(以下「期待値比」)で比べました。1.20なら、人気から想像されるより2割多く3着内に来ている、という意味です。あわせて、何年中何年で平均を上回ったかも見て、たまたまの好成績を外しています。
検証①:昇級初戦に強い厩舎はある?
1〜3勝クラスで、そのクラスに初めて出走したときの成績です。全体の期待値比は0.98と、ほぼ平均どおりでした。
| 厩舎 | 出走(勝) | 3着内率 | 期待値比 | 平均以上の年 |
|---|---|---|---|---|
| 上村洋行 | 175(52) | 52.6% | 1.29 | 7年中6年 |
| 田中克典 | 138(27) | 44.2% | 1.27 | 6年中5年 |
| 杉山晴紀 | 282(56) | 44.3% | 1.21 | 8年すべて |
| 長谷川浩大 | 127(18) | 37.8% | 1.20 | 8年中7年 |
上村洋行厩舎は、昇級初戦で約3割が勝っています。杉山晴紀厩舎は出走数がいちばん多いのに、8年すべてで平均以上。安定感が抜けていました。
おもしろいのは長谷川浩大厩舎です。ふだんのレースの期待値比は0.96と平均並みなのに、昇級初戦だけ1.20に上がります。「上のクラスでも通用する馬を見極めて上げている」のかもしれません。
反対に、ふだんは平均以上なのに昇級初戦だけ数字が落ちる厩舎もありました(松永康利厩舎、杉浦宏昭厩舎など)。上のクラスに慣れるまで時間がかかるタイプで、2戦目以降に狙うほうが合いそうです。
厩舎とは別に、クラスでも差がありました。1勝クラスの昇級初戦で人気薄の馬は割引(期待値比0.86)。一方、2・3勝クラスの昇級初戦は人気薄でも平均並みで、割り引く必要はありませんでした。
検証②:「休み明けから仕上げてくる厩舎」は本当にある?
まず全体では、12週以上の休み明けは期待値比0.94、半年以上だと0.84。休み明けはやはり割引材料です。そのうえで、休み明けでも平均を上回る厩舎がありました。
| 厩舎 | 休み明けの期待値比 | ふだんの期待値比 | 半年以上の休み明け |
|---|---|---|---|
| 坂口智康 | 1.11 | 0.84 | 1.85(30回) |
| 上村洋行 | 1.11 | 1.09 | 1.35(59回) |
| 森秀行 | 1.10 | 0.99 | 1.25(94回) |
| 田中克典 | 1.16 | 1.09 | 0.93 |
「休み明けから仕上げてくる厩舎」の代表は坂口智康厩舎でした。ふだんは平均を下回るのに、休み明けになると1.11、半年以上の休み明けなら1.85。8年中7年で平均以上です。森秀行厩舎は長期休養明けを94回も使っていて、それでも平均以上でした。
一方、8年間一度も休み明けで平均に届かなかった厩舎もあります。そうした厩舎の休み明けは「次に向けたひと叩き」と考えたほうがよさそうです。
検証③:新馬戦は厩舎で決まる?
5つの場面のなかで、厩舎の差がいちばん大きかったのが新馬戦です。タイプが3つに分かれました。
人気になって、そのとおり走る厩舎
| 厩舎 | 出走 | 勝率 | 3着内率 | 期待値比 |
|---|---|---|---|---|
| 堀宣行 | 107 | 33.6% | 70.1% | 1.28(8年すべて平均以上) |
| 中内田充正 | 143 | 30.1% | 64.3% | 1.16 |
| 木村哲也 | 158 | 29.7% | 60.1% | 1.18 |
堀宣行厩舎は平均2番人気なのに、さらにその上を行きます。新馬戦の軸として、いちばん信頼できる厩舎でした。
人気薄でよく来る厩舎
| 厩舎 | 平均人気 | 期待値比 | 平均以上の年 |
|---|---|---|---|
| 田島俊明 | 8.5番人気 | 1.40 | 8年中7年 |
| 千田輝彦 | 9.4番人気 | 1.40 | 8年中7年 |
| 鹿戸雄一 | 4.7番人気 | 1.31 | 8年中6年 |
新馬戦で穴を狙うなら、田島俊明厩舎と千田輝彦厩舎。人気がないことが多いのに、毎年のように人気以上に走っています。3連複・3連単の相手に入れておきたい厩舎です。
人気ほどは走らない厩舎もありました。勝率は高いのに期待値比が1.0を下回る、いわゆる「人気になりすぎる」パターンです。また、新馬戦では8年間ほとんど勝てていない厩舎もあり、こうした厩舎は初戦から仕上げるより、使いながら良くしていく方針なのだと思います。
検証④:連闘は買い?消し?
前の週に走った馬が、続けて出てくる連闘。全体では期待値比0.98と、ほぼ平均でした。差が出たのは「前走の着順」です。
| 連闘のパターン | 3着内率 | 期待値比 |
|---|---|---|
| 前走1〜3着からの連闘 | 38.9% | 1.08 |
| 前走4〜9着からの連闘 | 17.9% | 1.00 |
| 前走10着以下からの連闘 | 5.8% | 0.72 |
好調のまま続けて使う連闘はプラス、大敗からの連闘はマイナス。言われてみれば当たり前ですが、数字ではっきり差が出ました。厩舎別では、浜田多実雄厩舎が連闘108回で期待値比1.40と、連闘を上手に使う厩舎でした。
検証⑤:「関東馬の関西遠征は割引」は本当?
| 区分 | 3着内率 | 期待値比 |
|---|---|---|
| 地元で走る(関西馬が関西、関東馬が関東) | 22.1% | 1.01 |
| 関西馬が関東へ遠征 | 25.2% | 1.03 |
| 関東馬が関西へ遠征 | 14.3% | 0.87 |
これは本当でした。関東馬の関西遠征は0.87と、はっきり割引。逆に関西馬の関東遠征は、勝負になる馬を選んで送っているためか、平均を少し上回ります。
ただし厩舎によっては例外があります。関西の小崎憲厩舎は、地元では平均以下なのに関東遠征では期待値比1.28、しかも8年すべてで平均以上。関東の上原佑紀厩舎は、関西遠征で1.31でした。
5つを並べてみると
同じ厩舎の名前が何度も出てきました。
- 条件が変わっても強い:上原佑紀厩舎(昇級初戦・休み明け・関西遠征)、上村洋行厩舎(昇級初戦・休み明け)
- 得意と苦手がはっきり:田中克典厩舎は昇級初戦・休み明けで上位、関東遠征では期待値比0.82
- 場面を選ぶ:坂口智康厩舎(休み明け)、長谷川浩大厩舎(昇級初戦)、小崎憲厩舎(関東遠征)は、その場面でだけ数字が上がる
厩舎の「得意な使い方」は、たしかに数字に出ていました。予想では、馬の能力を見たあとに「この厩舎はこの場面が得意か」を足すと、人気薄の拾い方が変わりそうです。
まとめ:今回分かったこと
- 「休み明けから仕上げてくる厩舎」は本当にある。坂口智康厩舎、森秀行厩舎など
- 新馬戦は厩舎の差がいちばん大きい。堀宣行厩舎は人気でも信頼でき、田島俊明・千田輝彦厩舎は人気薄で狙える
- 連闘は前走しだい。好走からの連闘はプラス、大敗からはマイナス
- 「関東馬の関西遠征は割引」は本当。ただし上原佑紀厩舎のような例外もある
- 1勝クラスの昇級初戦で人気薄の馬は割引。2・3勝クラスなら気にしなくていい
おわりに
厩舎の話は、どうしても「印象」で語られがちです。数字にしてみると、印象どおりのところもあれば、知らなかった得意分野が見えてくる厩舎もありました。
次回は騎手編です。「乗り替わりは割引?」「トップ騎手がいるレースで成績が落ちる騎手はいる?」といった疑問を検証する予定です。ほかにも「これって本当なの?」という話があれば、ぜひコメントで教えてください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
※この記事はデータの検証記事で、馬券の購入をすすめるものではありません。数字は過去の成績で、今後も同じ傾向が続くとは限りません。馬券は20歳になってから、無理のない範囲で楽しみましょう。